定点人情大家の歴史政治小説(2017年12月24日)

前回の『密謀』で藤沢人情周平大先生の「政治力」の凄味を見せ付けられたので、すかさず大先生の「歴史政治モノ」の大作を頂戴致します。背表紙の内容紹介によれば、「江戸幕府から突然命じられた三方国替え。越後長岡への転封を強いられた藩主を守ろうと、荘内藩の百姓たちは越訴のため黙々と江戸をめざす。「雖為百姓不仕二君」を旗印に深山にわけ入り間道を伝って歩き続ける領民たちの相貌と彼らを衝き動かした情動を精緻に描く傑作歴史長編」です。もう、いきなり面白そうでしょ。

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・・・そして、やはり今作も凄まじい「政治力」でした。いや、今回は「歴史力」に感服しました。様々な登場人物・場面・情景が錯綜する同時進行劇のような展開で、イマイチ感情移入が難しく、途中まで何だか読みにくいなぁ・・・と思っておりましたが、これこそが大先生の「歴史観」の真骨頂。歴史や政治は決して一人の英雄豪傑によって動かされるのではなく、たくさんの人々の思惑と情念が絡み合い、かつ、たった一つの出来事が決め手となるのではなく、そこに至るまでの様々な過程・事象・偶然が複雑に作用し合って・・・つまり、一言では語り切れないということでしょう。抑制の効いた筆致で、でも、随所に「人の熱い思い」も感じられ、大先生、ワタクシ、またしても平伏でございます。読後に静かな感慨を長く抱ける素晴らしい一作でした。大先生のあとがきの「・・・ここには、たとえば義民佐倉宗五郎の明快さと直截さはない・・・中味は複雑で、奇怪でさえある。このように一面的でない複雑さの総和が、むしろ歴史の真実であることを、このむかしの“義民”の群れが示しているように思われる。あるいは誤解されかねない義民という言葉を題名に入れた所以である・・・」大先生、深いです。深過ぎですぜ。

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